香りと記憶の関係 2009.08.28 掲載 |
ある香りを嗅いで、その香りにまつわる記憶が鮮明に蘇った事はないでしょうか。例えば、異国の地を訪れた際に嗅いだ香り、その時の香りを嗅ぐと旅先の記憶が鮮明に瞬時に蘇るなど、香りは記憶と密接に結びついており、香りによって記憶を思い起こさせる効果を専門用語では、ブルースト効果といわれており、香りと記憶の不思議な繋がりがあることを物語っています。 当店でも、お香を販売中にお客様に試し焚きをするのですが、同じ香りでも、人それぞれ感じ方が違い、好き嫌いも違っております。例えば、ラベンダーのお香を試した場合、ある人は、いい香り~ と心地よくなる方もいれば、あっ、トイレの芳香剤の臭いなど、香りをイメージする記憶が人それぞれ千差万別に異なっております。 高級旅館や料亭で焚かれているお香は、お値段もそんなに高くはないのですが、香りを嗅ぐと料亭や旅館の記憶と結びついているため、優雅な気持ちになれます。 ある実験では、快い香りを嗅いだ人は、不快な香りを嗅いだ人に比べて、楽しかったことを思い出し、不快な香りを嗅いだ人は、苦しかった事やいやなことを思い出すともいわれています。香りが記憶を呼び起こしている実験結果となっております。 また、香りが脳に与える影響として、香りは、右脳を選択した上で刺激するということもいわれており、単純記憶(丸暗記)には良い効果が出ることもわかっております。 さて、香りはどのように記憶するかということですが、香り自体は形がなく、イメージしにくいもので、私も調香の際には、香りを色で覚えたり、何かに変換して形を作るようにしております。香水メーカーなどは、新しい香水を売り出す時に、ポスターばかりではなく、ビデオなど併用して、視覚イメージと結びつけたりして、より五感に訴えかける広告戦略をしています。 また、香りの感覚や知覚を鍛えることにより、夢の中で、香りを伴う夢を見るともいいます。一般的には考えられませんが、感覚を鍛えるとこのようなことも可能となるのです。 香りを聞き当てる香道の世界では、少し痴呆症状が出始めた方が、香道をしてしばらくして、痴呆症状が回復した事例もございます。質の良い香りを楽しみながら脳の老化を防ぐ方法なのかもしれませんね。 コラム一覧に戻る ホームページトップに戻る |
参考文献 「臭脳」 鳥居鎮夫 著 (発行・発売元:株式会社イーハトーヴフロンティア) |